2024-02-03

泉山

つい先日愛媛に帰省した時の話で。生まれ育った古い自宅を壊して「家庭菜園にやりかえたんぞ」と家から連絡を受けていた。

久々に田舎へ帰った翌日の朝、跡地の家庭菜園に行くと霜が降りていた。四方山に囲まれた畑に低い所から朝日が降り注ぐ。土から水蒸気がもくもく沸いて水の豊かさが分かる。その土から大根をひっこ抜く。

一緒にいる母親が「昔の家が畑になったんで」と、大根の余分な葉っぱ部分をむしりながら一言。大きさはふくらはぎくらいの立派なサイズ。

家→壊す→畑になる。

この作業が色々と「大変やった」とずっしりとしたトーンで連絡を受けていた。

そんな元自宅の家庭菜園は、基礎部分の外枠が辛うじて残っているくらいだったが、ぼんやり部屋の様子がわかる。「あそこのベランダで夏休みの宿題の絵画を描いたな」と思い出す。テーマは毎年決まっていて、正面にたたずむ泉山と決めていた。

描き方は単純で、画用紙の真ん中くらいから左右に山の稜線を大きく書いて、内側を緑色に塗る。外側部分を空色に塗って終わり。完成まで10分位で下書きなし。

先生は毎年「泉山」をテーマにしていた事に気づいていなかった。

その日の夕飯は大根おろしを使った鍋で。食べながら店に絵を飾るなら「よし、泉山だ」と密かに思い立った。